ドラマでは苦悩、現実では即断。多部未華子の “サムライマインド”がすごい

「えっ、あの多部ちゃんがそんなにバッサリ？」

2025年12月11日、CLASSY. / magacolの記事で配信された多部未華子さん（36）のインタビューを読んで、思わず背筋が伸びるような感覚を覚えた読者も多いのではないでしょうか。

主演ドラマ『シャドウワーク』で、自身初となるDV被害者役に挑んでいる多部さん。劇中では暴力と支配に怯える繊細な女性を演じていますが、素顔の彼女は驚くほど「サムライ」のような潔さを持っていました。

「悩むのは時間のムダ」「悩み事を一晩持ち越したことはない」

この言葉の強さ。一見するとドライで冷徹にも聞こえるこのスタンスですが、実はこれこそが、情報過多でマルチタスクを強いられる現代のアラサー・アラフォー世代が最も必要としている「幸福のためのライフハック」ではないでしょうか。

今回は、多部未華子さんが語った「せっかち人生観」を入り口に、なぜ彼女が仕事も結婚も子育ても軽やかに回せるのか、その本質的な理由と、私たちがそこから学べる「心のシャドウワーク（見えない労働）」の減らし方について深く考察します。

「せっかち」は最強のビジネススキル？決断力の正体

インタビューの中で多部さんは、ご自身のことを「ものすごくせっかち」「父親譲りで生まれつき」と語っています。一般的に「せっかち」という言葉には、「落ち着きがない」「情緒がない」といったネガティブなニュアンスが含まれがちです。しかし、多部さんの文脈における「せっかち」は、明らかに別の意味を持っています。

それは、「決断のスピード感」です。

心理学には「決定回避の法則」や「現状維持バイアス」という言葉があります。人間は選択肢が多いほど選べなくなり、変化を恐れて現状維持を選びたくなる生き物です。特に現代は、SNSを開けば無数の「正解のような他人の人生」が溢れかえっています。「こっちを選んだら失敗するかも」「あの子のようにはなれないかも」と悩み続ける時間は、私たちの脳のメモリ（ウィルパワー）を激しく消費します。

多部さんの「悩みを一晩持ち越さない」というスタンスは、この「脳のメモリ浪費」を徹底的にカットしていると言えます。

「迷っている時間がもったいないというか、白黒はっきりさせたいタイプなんです。だから、何でもすぐに結論を出してしまいます」

これは、経営者やトップアスリートに共通する資質です。彼女は「せっかち」なのではなく、「自分の人生の経営者」として、時間という限られたリソースをどこに投資すべきかを瞬時に判断しているのです。悩むことに時間を使うくらいなら、行動して、失敗したらその修正に時間を使う。その方がトータルの生産性が高いことを、彼女は本能的に知っているのでしょう。

「直感で結婚即決」ができる人とできない人の決定的な差

多部さんは、中学生での芸能界入りも、そして2019年の写真家の方との結婚も、その後の出産・復帰のタイミングも、側から見れば驚くほどスムーズな流れで決断しているように見えます。「結婚も即決だったのでは？」という推測に対し、彼女の生き方を見れば「イエス」である可能性は極めて高いでしょう。

では、なぜ彼女は人生の重大な決断を「即決」できるのでしょうか？
普通の人は「本当にこの人でいいのか？」「今仕事を休んでいいのか？」と悩みます。この差はどこにあるのでしょうか。

その答えは、「自分の価値観の優先順位が明確かどうか」に尽きます。

即決できない人は、選択肢のメリット・デメリットを比較して悩みます。しかし、即決できる人は「自分は何が嫌で、何が一番大切か」という軸がブレません。
多部さんの場合、インタビューや過去の発言を紐解くと、「嘘がないこと」「対等であること」「自然体でいられること」といったコアな価値観が非常にハッキリしているように見受けられます。

「直感」とは、決して当てずっぽうなギャンブルではありません。過去の経験と自己対話の膨大なデータの蓄積が、瞬時に弾き出した「最適解」のことです。

多部さんが「悩まない」のは、日頃から自分自身との対話を済ませているから。だからこそ、いざという時に「信頼できる友達に軽く聞く」だけで、最後の一押しを得て決断ができるのです。彼女の「せっかち」は、日々の自己研鑽の賜物と言えるかもしれません。

ドラマ『シャドウワーク』と多部さんの生き方の皮肉な対比

現在放送中の主演ドラマ『シャドウワーク』についても触れておかなければなりません。このタイトルにもなっている「シャドウ・ワーク」という言葉は、イヴァン・イリイチが提唱した社会学用語で、本来は「家事・育児・通勤など、報酬が支払われない見えない労働」を指します。

ドラマでは、この概念を「家庭内での精神的支配（モラルハラスメントやDV）」という、さらに見えにくい暗部へと拡張して描いています。多部さん演じる主人公は、夫の顔色を伺い、自分の意見を飲み込み、悩み続けることで心をすり減らしていく役柄です。

ここに、女優・多部未華子の凄みがあります。

実生活では「悩むのはムダ」「白黒はっきりさせたい」という、精神的自立を果たしている彼女が、ドラマの中では「白黒つけられず、グレーな地獄を彷徨う女性」を演じているのです。

自分とは真逆の思考回路を持つキャラクターを演じること。これこそが、彼女にとっての最大の挑戦であり、女優としての力量が試される場なのでしょう。「私なら即決で逃げるのに」と思うような状況でも、役として悩み、苦しむ。その葛藤をリアルに表現できるのは、彼女が「悩むことの非生産性」を誰よりも理解しているからこそ、「悩まざるを得ない状況の残酷さ」を客観的に浮き彫りにできるからではないでしょうか。

「悩む時間」こそが最大の「見えない労働」かもしれない

記事の中で多部さんは、子育てと仕事の両立について、時間のやりくりに奮闘しながらも「子どもと会話をする時間がとても楽しくて幸せ」と語っています。

ワーキングマザーにとって、時間は砂金のように貴重です。
ここでタイトルの「シャドウワーク」という言葉を、もう一度別の角度から見てみましょう。

私たちは普段、物理的な家事（料理や掃除）をタスクとして数えますが、実はそれ以上にエネルギーを使う「精神的なシャドウワーク（見えない労働）」を抱えています。

• ・今日の夕飯、何にしようか悩み続ける時間
• ・あの一言、余計だったかなとクヨクヨする時間
• ・仕事のミスを帰宅後も引きずって反省する時間

これらは全て、誰も褒めてくれないし、お金にもならない、自分を疲れさせるだけの「労働」です。

多部さんの「悩むのは時間のムダ」という提言は、「この精神的なシャドウワークをボイコットしよう」という宣言のようにも聞こえます。

クヨクヨ悩む時間を削減すれば、その分、子どもと笑って話す時間が増える。夕飯の献立で迷う時間を減らせば（例えば月曜は魚と決めてしまうなど）、その分、自分の肌をケアする時間が取れる。
多部さんがいつも透明感あふれる美しさを保ち、軽やかに見えるのは、この「心の無駄な労働」を徹底的に排除し、生まれた余白を「愛する対象（子どもや仕事）」に100%注いでいるからではないでしょうか。

結論：今日からできる「多部流・即決マインド」の育て方

多部未華子さんの生き方は、私たちに「正解を探すこと」よりも「選んだ道を正解にするスピード」の大切さを教えてくれます。

とはいえ、明日からいきなり性格を変えるのは難しいもの。そこで、多部さんのマインドセットを取り入れるための具体的なファーストステップを提案します。