2025年11月12日、元首相・鳩山由紀夫氏が自身のX（旧Twitter）に投稿した「中国の内政問題に日本は関わってはならない」という発言が、政界とネットで波紋を呼んでいます。
この記事では、発言の背景・国際的評価・日本外交への影響を多角的に分析します。

◆ 鳩山由紀夫氏の発言全文とその背景

鳩山氏は2025年11月11日午後、自身のXにこう投稿しました。

「孫崎享氏曰く、敗戦国日本は多額の賠償金を払うべきところ、周恩来首相は、日本人と軍国主義者を分け、多くの日本人も被害者だとして賠償金を要求しなかった。その代わり台湾は中国の一部と認めて欲しいと言い、日本はそれを尊重するとした。だから中国の内政問題に日本は関わってはならないのだ」

つまり、1972年の日中共同声明で日本が「台湾を中国の一部と認める」と明記した歴史的経緯を踏まえ、「日本は台湾問題に軍事的に関与すべきではない」と主張しているのです。

背景には、高市早苗首相が国会で「台湾有事は存立危機事態になりうる」と発言した件（Yahoo!ニュース参照）がありました。
鳩山氏はこの発言に対し、「日本政府が軍事的対応を口にすること自体、戦後外交の原則から外れている」と警鐘を鳴らしています。

◆ 日本政府の「台湾有事」認識とのズレ

現在の日本政府は、米国との同盟を前提に「台湾有事＝日本有事」という認識を強めています。
しかし鳩山氏のような“旧友愛外交”の立場からは、この見方は危険だと映ります。

この対立構図は、単なる意見の違いではなく、戦後日本の外交理念と現実的安全保障政策の衝突を象徴しています。

◆ 国際社会の反応：米中関係の狭間で揺れる日本

米国のバイデン政権は「台湾防衛に関与する」と明言しており、NATO諸国もそれを支持する姿勢を見せています。
一方で、中国は「台湾問題は完全なる内政問題」と主張し、日本の発言や行動に対して敏感に反応しています。

鳩山氏の発言は中国寄りと批判される一方、国際法的には「内政不干渉の原則」に立脚しているとも解釈可能です。
国際政治学者・田中明彦東京大学名誉教授も、「台湾問題は“グレーゾーン”であり、明確な国際法上の地位を巡る論争が続いている」と指摘します。

このように、鳩山氏の発言は「国際的孤立」ではなく、むしろ一部の欧州的現実主義に近い視点だという見方もあります。

◆ 世論の反応とネット上の論争

日本国内の反応は真っ二つです。SNSでは「鳩山氏の発言は売国的だ」「戦争を避けたいなら当然の意見だ」と意見が対立しました。

鳩山氏は過去にも「東アジア共同体構想」を唱え、中国・韓国との対話を重視してきましたが、
その姿勢が“親中”と批判される一因にもなっています。

◆ 今後の日本外交に求められる“バランス感覚”とは

安全保障の観点から言えば、台湾海峡の不安定化は日本の経済と安全に直結します。
日本がどの程度“関与”するかは、軍事だけでなく、経済・人道・情報分野すべてに影響を及ぼします。

一方で、鳩山氏が警告するように「中国の内政問題」という原則を無視して軍事的に踏み込むことは、
戦後日本の「平和国家」理念を揺るがすリスクも孕んでいます。

外務省公式サイトによれば、
日本政府は「台湾を国家として承認していないが、経済・人的交流は維持している」との立場を取っており、
今後の政策は“現状維持の徹底”と“抑止力の確保”という二律背反の中で舵取りを迫られます。

◆ 結論：「鳩山発言」は“時代遅れ”ではなく、“原点回帰”の問い

一部メディアでは鳩山氏の発言を「親中発言」と断じていますが、実際には国際法と外交原則に基づく冷静な問題提起でもあります。
彼の言う「内政問題」という言葉は、戦後日本が築いた“非軍事外交”の精神を再確認させるものであり、
今後の日本外交にとって重要な“自己反省”の契機になるでしょう。

政治学者・時事通信・田崎史郎氏も「鳩山氏の主張は理解しづらいが、戦後日本の出発点を思い出させる」と述べています

台湾をめぐる問題は、単なる領土や安全保障の議論ではなく、
「日本がどんな国でありたいか」という哲学的問いを突きつけています。

出典

• 日刊スポーツ「鳩山由紀夫氏が持論『中国の内政問題に日本は関わってはならない』」
• 外務省：日本政府の対中外交方針
• Yahoo!ニュース トップページ
• 東京大学 田中明彦名誉教授コメント