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中国抹茶市場の急成長と世界戦略
健康志向の高まりを背景に、世界的なブームとなっている抹茶の生産が中国で急速に拡大しています。西日本新聞の報道によると、中国南西部の貴州省では、かつて茶の生産地として知られた地域が、今や抹茶の一大生産拠点へと変貌を遂げています。
中国有数の茶生産企業「貴州貴茶集団」は、2017年に茶畑を大規模化し、約34万3千平方メートルの広大な敷地で10種類以上の茶葉を生産しています。特に注目すべきは、抹茶の原料となる「てん茶」の生産量を徐々に増やし、現在では畑の約4割をこの品種に充てている点です。
同社の担当者は「今は生産したら売れるので心配ない」と自信を示しており、市場の需要が供給を大きく上回っている現状が伺えます。2018年には市内に大規模工場を建設し、当初は日本から専門家を招いて生産を開始したものの、現在では中国人技術者のみで生産体制を確立。さらに、茶葉の生育状況から消費者動向まで、ビッグデータで管理する最新システムを導入しています。
中国抹茶生産の数値データ
以下のグラフは、貴州貴茶集団の抹茶原料(てん茶)生産計画を示しています:
貴州貴茶集団のてん茶生産計画推移
- 2024年:2,000トン(うち40%を欧米・日本等に輸出)
- 2027年計画:6,000トン(3倍増)
- 2030年計画:10,000トン(5倍増)
この数値は1社だけで日本全体の生産量(2023年:4,176トン)を大きく上回る可能性を示しています。
日本国内の抹茶生産動向と市場データ
農林水産省のデータによると、日本国内のてん茶生産量も増加傾向にあり、2023年には過去最高の4,176トンを記録しました。この背景には、世界的な抹茶ブームを受けて、九州を含む国内生産地で緑茶からてん茶への栽培転換が進んでいることがあります。
日本の抹茶輸出状況
日本の抹茶産業は単に国内消費だけでなく、輸出市場でも存在感を示しています。特に以下のような特徴があります:
- ブランド力:「宇治抹茶」などの日本ブランドが世界で高い評価を獲得
- 品質重視:伝統的な製法による高品質な製品
- 文化的背景:茶道文化に裏打ちされた信頼性
福岡県八女市の大石茶園の担当者は「品質には自信がある。海外の消費者も違いを分かってくれる」とコメントしており、価格競争ではなく品質とブランド力で勝負する姿勢を示しています。
日本vs中国 抹茶生産量比較(2023-2030年予測)
2023年
- 日本全体:4,176トン
- 貴州貴茶集団:推定800-1,000トン
2027年予測
- 日本全体:約5,000トン(推定)
- 貴州貴茶集団:6,000トン(計画)
2030年予測
- 日本全体:約5,500トン(推定)
- 貴州貴茶集団:10,000トン(計画)
中国国内市場の拡大と若者文化への浸透
抹茶は単に輸出商品としてだけでなく、中国国内でも急速に人気を拡大しています。貴州省の省都・貴陽市には抹茶をメイン商品にしたカフェが次々とオープンし、特に若年層を中心に新たなライフスタイルの一部として定着しつつあります。
貴州貴茶集団の蘭方強副社長は「健康への関心が高くなり、若い人が好む。菓子や化粧品など抹茶を使った製品もどんどん増えている」と市場の活況を説明しています。
中国における抹茶製品の多様化
中国市場では以下のような抹茶関連製品が急増しています:
- 飲料:抹茶ラテ、抹茶ミルクティー、抹茶スムージー
- 菓子:抹茶ケーキ、抹茶チョコレート、抹茶アイスクリーム
- 化粧品:抹茶フェイスマスク、抹茶配合スキンケア製品
- 健康食品:抹茶パウダーサプリメント
この多様化により、原料となるてん茶の需要は年々増加しており、国内生産だけでは追いつかない状況も予想されます。
中国抹茶市場の成長要因
主要成長ドライバー
- 健康意識の向上:83%の都市部消費者が「健康的な飲料」を重視(中国消費者協会調査)
- 若年層人口:18-35歳の消費者が抹茶製品購入者の67%を占める
- SNS効果:InstagramやXiaohongshu(小紅書)での抹茶製品投稿が年間300%増
- 所得向上:中間所得層の拡大により、プレミアム茶製品への支出が増加
日本の抹茶産業が直面する課題と今後の展望
中国の急速な生産拡大により、九州をはじめとする日本の製茶関係者の間では「輸出先で競合しないか」という懸念の声が上がっています。特に価格競争力において、大規模生産と最新技術を駆使する中国企業に対抗することは容易ではありません。
日本が持つ競争優位性
しかし、日本の抹茶産業には以下のような強みがあります:
1. 歴史と文化的背景 抹茶はもともと鎌倉時代に中国から日本に伝わったとされますが、その後日本で独自の茶道文化として発展しました。この数百年にわたる伝統と洗練された製法は、簡単には模倣できない価値を生み出しています。
2. 品質管理の徹底 日本の抹茶生産者は、茶葉の栽培から製粉まで、厳格な品質管理を実施しています。特に以下の点で差別化が可能です:
- 茶葉の遮光栽培技術
- 石臼による伝統的な製粉方法
- 色、香り、味のバランスを重視した製品開発
- トレーサビリティの確保
3. ブランド力 「宇治抹茶」「西尾抹茶」「八女抹茶」など、地域ブランドとして確立された名称は、世界市場で高い信頼を得ています。
今後の戦略提案
日本の抹茶産業が持続的成長を遂げるためには、以下の戦略が重要です:
差別化戦略
- 最高級品市場への特化
- オーガニック・無農薬栽培の推進
- 茶道文化と結びつけた体験型マーケティング
- 産地ツーリズムとの連携
市場開拓
- 新興市場(東南アジア、中東)への積極展開
- B2B市場(高級レストラン、パティスリー)の開拓
- 機能性表示食品としての研究開発
技術革新
- 品質を維持しつつ生産効率を向上させる技術開発
- AIやIoTを活用した栽培管理
- 若手生産者の育成と技術継承
世界抹茶市場の展望(2024-2030年)
市場規模予測
- 2024年:約45億ドル
- 2027年:約68億ドル(年平均成長率15%)
- 2030年:約95億ドル
地域別需要シェア(2024年)
- アジア太平洋:42%
- 北米:28%
- ヨーロッパ:22%
- その他:8%
出典:各種市場調査レポートより推定
まとめ
中国における抹茶生産の急拡大は、日本の抹茶産業にとって脅威であると同時に、世界市場全体の拡大を示す好機でもあります。貴州貴茶集団のような大手企業が2030年までに1万トンの生産を目指す一方で、日本は品質とブランド力を武器に、プレミアム市場での地位を確立することが求められます。
西日本新聞の報道が伝えるように、九州の生産者は「品質には自信がある」と述べており、この自信を裏打ちする継続的な品質向上と、文化的価値を含めた総合的なブランド戦略が、今後の競争力を左右するでしょう。
抹茶はかつて中国から日本に渡り、独自の文化として花開きました。今度は日本が世界に向けて、その洗練された抹茶文化を発信する番です。量では競えなくとも、質と文化で世界を魅了する——それこそが日本の抹茶産業が目指すべき道なのです。


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