GEZANマヒトゥ氏が高市首相を「バカ」と一喝して謝罪へ…その裏にある「服装マウント」と「パンクの矜持」の衝突とは？

週末のタイムラインがざわつきましたね。日本を代表するオルタナティブロックバンド「GEZAN」のマヒトゥ・ザ・ピーポー氏と、国のトップである高市早苗首相の間で起きた、あまりに「水と油」な衝突。

単なる暴言騒動として片付けるのは簡単ですが、ここには「権力者の振る舞い」対「ストリートの美学」という、永遠のテーマが隠されています。

なぜ彼は「バカ」という強い言葉を使ったのか？そして、なぜその後に声明を出したのか？

事の発端は11月21日。南アフリカ・ヨハネスブルグで開催されるG20サミットへ向かう高市首相のX（旧Twitter）への投稿でした。

この発言、政治記者や支持層からは「外交は戦いだから当然の準備」「女性リーダーとしての覚悟」と捉えられた一方で、カルチャー界隈やリベラル層からは強い反発を招きました。

なぜ「服」の話がここまで炎上したのか？

物価高や増税に苦しむ庶民感覚からすれば、「数時間かけて高い服を選ぶ＝マウントを取るため」というロジックが、「国民の方を向いていない」「権力ゲームを楽しんでいる」ように映ったのです「センス磨いてやるから武道館こい」

この投稿に噛み付いたのが、現代のパンクアイコン、マヒトゥ・ザ・ピーポー氏です。

彼のバンドGEZANは、単なる音楽活動にとどまらず、フリーフェス「全感覚祭」の主催や、映画出演、執筆活動など、常に「社会と個人の関わり」を問い続けてきた存在です。

彼は11月22日、首相の投稿を引用する形でこう放ちました。

「マジでシンプルになんでこんなバカが国のトップなの？
センス磨いてやるからGEZANの武道館こいよ。
前売りかいとくから」

この投稿における「バカ」という直球すぎる罵倒。これが物議を醸しました。
しかし、ファンの心を掴んだのは後半部分です。「武道館こいよ（チケットは俺が買っておくから）」という一節には、「権力や金で武装するよりも、裸の魂（音楽）に触れてみろ」という、強烈な皮肉と、ある種の「対話への招待」が含まれていたからです。【比較図解】政治家vsアーティスト「価値観」の決定的ズレ

なぜ二人はここまで相容れないのか？今回の騒動を整理するために、両者の「価値観の構造」を視覚化してみました。

高市首相にとって服は「戦闘服」であり、外交ツール。一方、マヒトゥ氏にとって服やスタイルは「生き様そのもの」。
「高価な服で武装しないと戦えない精神性」こそが、マヒトゥ氏にとって最も「ダサい（＝バカ）」と映ったのではないでしょうか。11/29声明文の深層「謝罪であって謝罪ではない？」

そして29日、事態は動きます。マヒトゥ氏が「先日の投稿について」と題した文書を公開しました。

この声明文、非常に巧妙かつ誠実です。
単に「すいませんでした」と頭を下げて終わるのではなく、「表現者として言葉選び（『バカ』という語彙）の貧しさ」は認めつつ、「怒りの根源」については撤回していないからです。

「音楽の現場を通して繋がった個人史」という言葉。これは、彼がこれまでの活動で見てきた、社会の片隅で生きる人々、貧困、排除されてきた人々の顔が、高市首相の「数時間を費やして選んだ高い服」という投稿を見た瞬間にフラッシュバックしたことを示唆しています。

つまり、これは「言葉の選び方への謝罪」であり、「怒りそのものへの謝罪」ではないのです。

日本では「芸能人は政治を語るな」という風潮がいまだに根強いです。しかし、今回のGEZANマヒトゥ氏の行動は、賛否両論あれど、多くの人に「政治家は誰のためにあるのか？」「権威とは何か？」を考えさせるきっかけになりました。

高市首相の「ナメられないための服」も、厳しい外交の世界では一つの真実かもしれません。しかし、それを国民に向けて誇示することが、今の日本の現状においてどれだけ乖離しているか。

マヒトゥ氏は、その「乖離」に対して、最もプリミティブな言葉（バカ）で反応し、そして理性的な言葉で回収しました。

最後に：武道館のチケットの行方は？

個人的に最も気になっているのは、「前売り買っとくから」と言われたGEZANの武道館ライブのチケットです。
もし仮に、高市首相がそのチケットを握りしめ、高いドレスではなくTシャツ姿でライブハウスに現れたとしたら……それこそが、日本が変わる一番パンクな瞬間になるのかもしれません。

音楽と政治、決して交わらない二つの線が、一瞬だけ火花を散らした週末でした。